(左:南極海ミンククジラ(クロミンククジラ)、右:ドワーフ(矮小型)ミンククジラ)
さらに、全世界のミンククジラの分類にも貢献している。
これまでミンククジラ(Balaenoptera acutorostrata)1種とされていたが、遺伝学的研究の結果、北半球と南極海で別種とする見解を確認した。
これらを受けて、現在では北半球のミンククジラ(B. acutorostrata、英名:common minke whale、和名:ミンククジラ)と南極海のミンククジラ(B. bonaerensis、英名:Antarctic minke whale、和名:クロミンククジラ)と区別されている。
また、ドワーフミンククジラは、南半球に生息するにもかかわらず、遺伝的には北半球産に近いことが明らかになっており、分類学的な位置については現在検討作業中である。
毎年交互に調査を行っている第W区(東経70〜130度)と第X区(東経130度〜西経170度)の海域には、各々独立したミンククジラの繁殖集団(系群)が存在していると当初は予測されていたが、DNAを用いた遺伝学的解析や形態学的解析結果から、この2つの海域にまたがった大きな中心的繁殖集団(コアストック)が存在すること、第W区の西海域には年によって、あるいは季節によってこれとは異なる系群が来遊することがあること、またコアストックが隣接する第V区や第Y区にまで広範に分布している可能性のあることが知られるようになり、南極海におけるミンククジラの系群の分布と季節移動が当初の予想より広範で複雑であることが判ってきた。

調査目的のひとつである、自然死亡率や加入率等の生物学的特性値は、系群毎に異なる可能性があるため、これらの特性値は系群毎に把握する必要があり、また管理方式を安全・確実に実行する上にも、系群の解明が必要である。
そこで1995/96年から調査域を拡大し、従来の調査を継続する一方で第W・X区に存在するコアストックの東西の分布限界を調査していくこととした。
今回の調査では、第W区で300頭±10%のミンククジラ標本採集を従来通り行うほか、コアストックの西の分布限界を調べることを目的に、一昨年と同様に第V区東海域(東経35〜70度)で100頭±10%の標本採集を行う予定である。
漁業は再生産が可能な海洋生物資源を利用するので、適正な資源管理の下で利用を行えば、自然の破壊を伴うことなく、生産を継続することが可能である。
科学的根拠に基づき生態系のバランスを図りながら再生産可能な範囲内で海洋生物資源を利用することと、そのための保護管理は、急激な人口増加の中での生存を確保するために人類が最優先で取り組まなければならない課題であるが、本調査はこうした問題の解決に十分貢献すると確信している。
(左:アデリーペンギン、右:カニクイアザラシ)