第12回 得られた成果

その他航海報告

● 航海報告

1996/97年

 1996/97年度調査は、VI区西側海域を含め1996年11月30日から1997年3月13日の105日間にわたり、目視採集活動を実施した。
 調査期間中の発見鯨種と発見タイプ別群頭数を表1に示した。ミンククジラは、全調査期間を通じて、発見鯨種中最も多く一次発見852群2,608頭及び二次発見113群626頭であった。またドワーフ型ミンククジラは、一次発見9群9頭及び二次発見1群1頭であった。 調査の初期(12月)に実施した第VI区西側海域の調査では、ミンククジラ、ザトウクジラ、ナガスクジラ、マッコウクジラ及びミナミトックリクジラが、広く分布する結果を得た。しかし第V区の調査では、上述の鯨種については、ミンククジラを除き陸棚斜面以浅の水域で占められる南部東海域(ロス海)での発見がなく、これらの鯨種が、陸棚以浅の水域に回遊しないことを示す結果となった。
 ミンククジラは、調査期間中を通じて調査海域に広く分布しその発見密度に際立った差が見られないが、来遊盛期とされている1月から3月上旬にかけては調査海域の南側で発見密度が高い傾向が認められ、他の鯨種が来遊しない陸棚斜面以浅の水域や氷縁部の奥部に形成される開氷域をも積極的に利用していることが伺えた。また、ロス海では、ミンククジラ以外にシャチやミナミツチクジラの発見があった。シャチはミンククジラ同様にこの水域に広く分布する傾向が確認され、ミナミツチクジラは最奥部に局所分布していた。シャチやミナミツチクジラは、ミンククジラと食性が異なり魚類やイカ類の分布に関係することが考えられる。
 第VI区西側海域調査は、ミンククジラの系群判別とともに時間的及び空間的な変化について今回採集した標本と隣接する第V区の標本を性状態別体長組成と性成熟組成で予備的に検討したが、顕著な差は見られなかった。また、mtDNAを用いた解析結果においても異なる系群の存在は認められなかった。しかしながら、年変動の影響を受けている可能性は否めないので、更なる標本の収集を伴なう総合的な解析を行う必要性が生じてきている。

表1. 1996/97年鯨類捕獲調査で目視専門船及び標本採集船で発見された鯨類の群頭数
(往復航目視調査を除く)
鯨種名 第IV区西 第V区
目視専用船 標本採集船 目視専用船 標本採集船
一次発見 二次発見 一次発見 二次発見 一次発見 二次発見 一次発見 二次発見
ミンククジラ 42/77 5/9 158/325 14/15 173/947 51/212 479/1259 43/390
ドワーフミンククジラ   1/1         9/9  
ミンククジラらしい 11/11 1/2 9/11 2/2 6/7 6/19 21/21 13/118
シロナガスクジラ 4/5 2/3 2/3 1/2 1/1     1/1
ナガスクジラ 10/33   12/25 3/4 9/15   6/9 4/16
ザトウクジラ 20/43 7/14 53/89 7/13 10/16 2/3 32/54 17/34
イワシクジラ             1/1  
ヒゲクジラ類 20/38 2/4 50/75 15/24 8/8 11/24 29/52 3/6
マッコウクジラ 12/12 1/1 22/24 3/3 27/30 2/2 60/62 2/2
ミナミトックリクジラ 5/10   27/44 3/6 5/7   38/67 2/2
ミナミツチクジラ         1/10   5/30  
ヒモハクジラ             1/3  
オウギハクジラ属     1/1       1/1  
アカボウクジラ科鯨類 4/5   34/56   5/29 1/3 35/54  
シャチ 2/38 2/17 7/53   11/268 3/155 30/180 8/150
ヒレナガゴンドウ           1/20 2/220  
マゴンドウ属             4/160  
ゴンドウ類               1/10
ダンダラカマイルカ       1/5 6/100 2/3 27/124 8/40
鯨種不明イルカ類         3/55 1/6   1/3
鯨種未確認 9/12 1/1 81/82   20/22 6/6 108/109 1/1

1997/98年度調査概要

 これまでの調査において、第IV区には2つの異なる系群の存在が示されたものの、1995/96年度調査の結果だけではその来遊時期や混合状態について明確な結論が得られなかったことから、第IV区に加えて第III区東側海域の調査を再度行うこととなった。
 本調査は、III区東側海域を含め1997年12月7日から1998年3月14日の98日間にわたり、目視採集活動を実施した。例年にない氷の張り出しのため、プリッツ湾海域での探索距離は少なかったものの、全体的にはこれまで実施した調査中最も多い探索努力量が払われた結果となった。その理由として、調査期間中を通じて天候が安定したことと目視専門船における調査の一部で通過方式(鯨群を発見しても接近し確認せずに探索を継続する)を採用したことがあげられる。
 調査期間中の発見鯨種と発見タイプ別群頭数を表2に示した。全調査期間中のミンククジラの発見は、一次発見672群1373頭及び二次発見186群546頭であった。ドワーフ型ミンククジラの発見は、一次発見2群2頭のみであった。ミンククジラは12月後半における第III区東側海域や3月上旬の第IV区のプリッツ湾海域における氷縁付近で分布密度が高かったが、第IV区の南部海域全体では氷縁際であっても高密度水域が確認されず、その密度は、北部海域に比べわずかに高い程度であった。この結果は、前述した氷の張り出しが例年になく強かったことに関係しているかも知れない。
 本調査の鯨類の発見分布における大きな特徴は、第IV区の調査海域全体を通じて、ザトウクジラの発見が目立ったことである。発見数においてもこれまでの調査で最も多かったミンククジラを抜く結果となった。これまでの調査を通じ、ザトウクジラの発見及び密度は第IV区において増加傾向にあることが示されている。調査のたびに前回調査を上回っているザトウクジラの発見は資源回復の兆候を示唆するものである。第III区東海域前期調査では、体長285cmの雌の胎仔を採集した。この胎仔体長はミンククジラの出生時体長に匹敵する。1995/96年度調査においても同海域で体長281cmの雄の胎仔を採集している。これまでの調査で隣接する第IV区では体長200cmを越える胎仔が出現していないことから、今後注目していくべき課題と考えられる。
 これまでの調査ではXBTにより調査海域の海洋観測を行っていたが、今航海からこれに代わりXCTDを導入した。XCTDは、海水の鉛直水温に加え塩分濃度を記録することができるので、解析結果を鯨類や餌生物の分布等の知見と併せることで、南極海の生態系解明に貢献することが期待されている。またソノブイと呼ばれる水中音録音装置が新たに導入され、主にシロナガスクジラの行動観察と併用し、鳴音による種の個体識別の手法としてその応用が期待されている。

表2. 1997/98年鯨類捕獲調査で目視専門船及び標本採集船で発見された鯨類の群頭数
(往復航目視調査を除く)
鯨種名 第III区東 第IV区
目視専用船 標本採集船 目視専用船 標本採集船
一次発見 二次発見 一次発見 二次発見 一次発見 二次発見 一次発見 二次発見
ミンククジラ 12/15 5/13 133/243 19/100 115/228 35/83 412/887 127/350
ドワーフミンククジラ             2/2  
ミンククジラらしい 2/2 8/10 3/3 1/1 9/13 3/5 8/8 1/1
シロナガスクジラ   1/1 11/19 1/5 3/4   2/2  
ナガスクジラ 1/5   2/6 1/1 5/19 4/14 10/27  
ザトウクジラ 5/11 4/10 24/45 4/7 117/246 47/85 431/819 39/71
セミクジラ         7/8 6/7 27/29 2/2
ヒゲクジラ類 2/2 1/2 7/10 11/13 33/48 33/55 22/31 4/105
マッコウクジラ 9/11 3/4 107/108 10/10 44/46 10/12 135/137 10/10
ミナミツチクジラ       1/3     1/4  
ミナミトックリクジラ 9/19 3/5 57/97 3/6 56/108 10/22 100/185 4/6
ヒモハクジラ     1/4          
ミナミオウギハクジラ       1/5        
オウギハクジラ属     6/11     1/7 1/3  
アカボウクジラ科鯨類 10/13 2/4 43/59 3/6 35/66 11/18 109/200 1/2
シャチ 3/15   6/15   20/260 4/35 53/605 3/26
ダンダラカマイルカ   1/2     1/20 1/3 6/37  
ヒレナガゴンドウ             7/370 2/90
ゴンドウクジラ類             2/85  
鯨種未確認 10/12   76/76 1/1 27/42 10/12 174/177  



第12回 得られた成果