●1994年
初年度(1994年)の調査は、予備調査として、IWC/SCが想定した13の海区の内、9海区(北緯35度以北、東経157度〜170度)の一部海域を対象として7月5日より調査を開始した。しかしながら、この年は、例年になく太平洋高気圧が大きく発達し、また日本近海で停滞したため、日本国内においても記録的な猛暑となる異常気象の年となった。この時、調査海域もこの高気圧の影響を同様に受けて、海域全体が濃霧となって、十分な調査活動を行うことが出来ず、目標標本数をはるかに下回る21個体の採集に終わった。この調査で採集された21頭の鯨体標本の解析結果から、沖合海域に分布するミンククジラは日本太平洋沿岸のものと同じ遺伝情報と形態をもつことが示唆された。しかしながら、少標本数のため上記の仮説を明らかにするほど統計的には十分なものではなかった。
●1995年
1994年の結果を受けて、1995年は標本数の確保と分布の年変動も併せて検討することを目的として、再度9海区の調査を行うこととなり、同年6月9日から8月22日にかけて1隻の採集船の増船及び調査方法の一部改良を行って調査を実施した。この年は、好天に恵まれ、十分な調査活動の下で目標とした100頭の標本を採集することに成功した。また、これらの標本の解析から得られた結果は、前年に示唆された結果を支持するものであり、1996年のIWC/SCにおいて開催された北太平洋ミンククジラ運用試行に関する作業部会においてこれらの結果を報告して高い評価を受けている。
●1996年
この結果を受けて、日本国政府は沖合域でのW系群の存在の可能性は小さく結論に近い結果が得られたと判断し、第3回の調査(1996年)では、O系群における亜系群の可能性を検証にすることを主目的として、対象海域を日本周辺の海域(7海区、8海区及び11海区)とした。しかしながら、沖合域である7海区東側及び8海区ではミンククジラの来遊時期が当初予想された時期より早く北上しており、また、この年は梅雨前線が停滞したため長期間にわたって雨ガスとなるなどの悪条件が重なって、十分な調査活動が行うことができず、沖合い域ではわずかに17頭の標本を収集するに終わった。このため、当初は1997年に実施を計画していた11海区の調査を先行実施することとなり、8月 日から23日にかけて調査を行って30頭の標本を収集した。
これらの鯨体標本の分析結果から、太平洋側の7区及び8海区ではこれまでの結果と同様にO系群であることが再確認され、また北海道のオホーツク海沿岸域である11海区では、これまで4月にO系群とJ系群が混合していることが知られていたが、今回の調査から夏季である8月にも混合のあることが明らかとなった。また、太平洋の沖合い域では夏季にサンマが餌生物として重要な位置を占めていたが、11海区ではアミ類が、また7区西側ではサンマに加えてスケトウダラやアミ類なども消費しており、海域によって利用する餌生物が異なることが明らかになるなどの新しい知見が得られた。
●1997年
1996年に開催されたIWC/SCの作業部会では、夏期調査から9海区ではW系群の存在を示唆する結果が得られていないことが合意されたが、来遊初期にあたる4月から5月の時期の分布状況が不明であるために、W系群が無いとの結論までには至らなかった。この疑問に答える為に、1997年の第4回調査では、5月から6月に9海区の調査を行って78頭の標本を収集し、また7海区東側及び8海区からの追加標本(22頭)の収集にも成功した。これらの分析結果は、現在解析が進められており、結論はこれらの解析作業をまたなければならないが、現在までのところ遺伝学や数種の生物学的特性値などの比較からはこれまでと同様にW系群の存在を示唆する結果は得られていない。
●1998年
1998年調査はO系群の夏期における主要な分布域であるオホーツク海(12海区)の調査を計画したが、12海区の大部分を領海として宣言しているロシアからの入域が未だ許可されないことから、1998年調査ではこれまでの調査から標本が不足している7海区東側(7E)及び8海区西側(8W)の調査に重点を置いて、北上回遊途上にあたる春から初夏までの期間(5月から6月)に調査を行って標本を確保するとともに、11海区におけるO系群とJ系群の混合の実態をより明らかにするため、これまで標本が十分に収集されていない7月に調査を行うことを計画して、調査が開始された。その結果、予想以上に多数のミンククジラが7E及び8W海区に分布しており、同海域から100頭の標本を収集し、調査を終了した。
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