SI号は1月17日に豪州のホバートに入港し、給油と物資補給を終えた後、1月21日に再び調査船団を妨害するため南極海に向けて出港した。
2月1日07:35(日本時間)、調査活動中の船団付近にSI号が現れ、日新丸に接近してきた。船団は安全確保のため避航を開始したが、翌2月2日の朝までに至近距離に追いつかれた。
2月2日03:06(日本時間)、SI号はマストに各種の旗を掲揚し、ヘリコプターとボートを発進させて攻撃を開始した。ボート上の活動家らは船団各船に対して酪酸などの入ったガラス瓶を多数投擲し、またプロペラを狙って船舶を航行不能にする特殊なロープ(PED:Propulsion Erosion Device)を繰り返し海中に投入した(注8)(写真2−5)。
(左から)2.調査母船日新丸に酪酸瓶を投げるSS活動家達(2009年2月2日)/ 3.第三勇新丸を攻撃するSSボートと撮影を行うヘリコプター(2009年2月2日)/ 4.勇新丸のプロペラを狙ってPEDを流すSS活動家達(2009年2月2日)/ 5.第三勇新丸が回収したSSのPED。放置すれば南極海の生物の脅威となっていただろう(2009年2月2日)
2月3日及び4日もSI号は日新丸に執拗にまとわりつき、衝突の危険を感じた日新丸は汽笛による疑問信号を度々吹鳴した。船団は回避のための移動を続けた。
2月5日、SI号はヘリコプターとボートを発進させ、再び調査船団各船への妨害活動を開始した。ボート上の活動家らは船団各船に対して酪酸瓶を多数投擲したほか、第三勇新丸に対しては50mm径のロープを船首直前に投入した。SSは、これに加え、SI号から直接調査船を狙って信号弾や救命索発射ロケットを何度も撃ってきた(注9)。直接の被害はなかったものの、勇新丸に向けて発射されたロケット弾は、船の上をかすめて後方に着水した(写真6-8)。
(左から)6.SI号から調査船に向けてロケット弾が発射された瞬間(2009年2月5日)/ 7.勇新丸頭上をかすめた救命索発射ロケット(2009年2月5日)/ SS代表のポールワトソン(中央)自らも調査船に向けてロケット弾を撃った(2009年2月5日)
また、SI号はおよそ100mの長さのもやい綱を船尾から曳航して日新丸の船首前を横切るという行動もとった(写真9)。
9.調査母船日新丸のプロペラを狙ってSI号から流されたもやい綱は、長さ100mに達した(2009年2月5日)
2月6日、船団は捕獲調査再開を試みた。SI号はこの日はボートを発進させず、船尾からプロペラにからめるためのロープを曳航したり、酪酸瓶の投擲やロケット弾の発射を行ったりした。05:20(日本時間)、SI号は勇新丸が採集した鯨体を調査母船日新丸に引き渡す際に、付近で警戒に当たっていた第二勇新丸に体当たりをし、船尾にいた乗組員に向かって酪酸瓶を投げつけた(写真10)。
10.日新丸後方で警戒に当たっていた第二勇新丸船尾にSI号が体当たりをした(2009年2月6日)
また、SI号によって、日新丸も酪酸瓶などの投擲を受ける被害を受けた他、勇新丸は船尾で警戒中の乗組員が金属製のボルトを投げつけられた。15:59(日本時間)、採集した鯨を渡すために日新丸船尾付近で作業中の第三勇新丸にSI号が急接近し、30本近くの酪酸瓶を投擲した後、いきなり右に大きく舵を切って第三勇新丸左舷に激しく体当たりした(写真11-12)。
(左から)11-12.調査で採集した鯨体を母船に渡そうとした第三勇新丸の左舷後方に、SI号が激しく体当たりした(2009年2月6日)
両船は接触したまま大きく傾斜し、この間にSI号の活動家2名が船首から大型フックをつないだロープを投げ込んで第三勇新丸に乗り移ろうと試みたが未遂に終わった(写真13)。
13.第三勇新丸に激突したSI号の船首から、活動家二人がロープを使って侵入しようとした(2009年2月6日)
第三勇新丸はボートデッキ左舷のハンドレールを全損し、外板の凹損やデッキに亀裂を生じるなど、大きな損傷を受けた(写真14)。
14.SI号の衝突で破損し、酪酸瓶の破片が飛び散る第三勇新丸の後部デッキ(2009年2月6日)。
2月7日、SI号は船団を追航するのみであった。2月8日、捕獲調査を再開した船団の後方にいたSI号は、無線で呼びかけてくる事もなくそのまま去って行き、2月20日に豪州ホバートに入港した。
注8.PEDは16.5mのロープにフロート24個と錘などが付いた装置で、船のプロペラに絡みついて航行不能にすることを狙ったもの。
注9.これらの「武器」は、法定備品として船舶に積まれているものであるが、今回使用されたのはおそらく二種類で、信号用火箭(かせん)及び救命索発射ロケットである。火箭は、本来、救難の合図のために使用されるもので、真上に打ち上げると200mほどの高さまで到達し、明るい炎を3秒程度発光させながら落下してくる。救命索発射ロケットは、本来、遭難船などに接近できない場合に、救命索や連絡索を受け渡すために使用される。一般的なものでも、ランチャーから発射された数百グラムの飛翔体が、ロケット推進により水平距離で200m以上飛翔し、人間に命中した場合には殺傷能力を有すると思われる。