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Q&A−南極海における日本の捕獲調査


南極海における日本の捕獲調査 PDF形式


<はじめに>

日本の目的は資源が豊富な鯨種を対象に国際的な管理の下で持続的な商業捕鯨を行うことである。 同時に、日本は絶滅危惧種の保存・保護にも尽力しており、このような日本の立場は国際捕鯨取締条約(ICRW※1)の目的にも合致している。

国際捕鯨委員会(IWC)の決定は科学的根拠、国際法、文化的多様性への配慮に基づいて行われるべきである。 持続的利用の原則と合わせて、科学に基づいた政策とルール形成を一貫して行っていくことこそ、世界的に認められている生物資源の管理パラダイムである。 鯨類資源の状態如何に関わらず、すべての商業捕鯨や捕獲調査を終わらせろという感情に基づく反捕鯨の立場は、それでなくとも困難な国際交渉の解決の妨げになるだけでなく、対決姿勢が露わな会議運営や二極化し固定化した議論の応酬に見られるような、現在IWCが直面している機能不全状態を生み出すこととなった。

これが南極海における日本の鯨類捕獲調査の議論をとりまく環境の実態である。

日本の捕鯨政策、そのIWCでの立場や鯨類捕獲調査は批判が投げかけられているが、そのほとんどは誤解や間違った情報に基づいている。以下のQ&Aは日本の捕鯨政策に対するもっとも一般的な質問や疑問に答えるためのものである。

<背景>

日本の南極海鯨類捕獲調査(JARPA)は鯨類資源に関する科学的情報が不確実であるという主張に応えたもので1987年から開始され、18年間にわたり実施された。日本の科学的調査の成果により、われわれは鯨類の資源状態や鯨類生物学に関して歴史上もっとも豊かな知見を持ちえることとなり、このような知見は毎年蓄積され、増加している。このJARPAの調査結果にもとづき、日本は2005年に新規拡大調査であるJARPAIIを開始した。

鯨類の科学的調査はIWCにとってきわめて重要である。 なぜならICRWは、本委員会で採択される規制措置は科学的知見に基づくものでなければならないと規定しているからである。 またICRWは、規制措置の如何に関わりなく、IWC加盟国は調査の目的で鯨類の捕獲することを認める特別許可を発給することができると規定し、また調査の副産物(鯨肉)を有効利用するよう加盟国に義務づけている。

※1 : ICRWの目的はICRW前文に「鯨類資源の適当な保存を図って捕鯨産業の秩序のある発展を促す」と定義されている。


Q1.日本は調査捕鯨が「擬似商業捕鯨」であるという批判にどのように応えるのか?

Q2.日本は条約の「抜け道」を悪用して捕獲調査を実施しているという非難にどう答えるのか?

Q3.JARPAII はJARPAからかなり拡大している。なぜザトウクジラやナガスクジラが加えられ、ミンククジラの捕獲頭数が増えたのか?

Q4.米国や英国、豪州その他の国々は、鯨を研究するために鯨を殺す必要はないと言っている。なぜ日本は非致死的な調査手法を使わないのか?

Q5.なぜ日本は、世界の世論に逆らい、商業捕鯨モラトリアムに反してまで調査捕鯨を続けているのか?

Q6.日本はなぜIWCの南極海サンクチュアリやオ−ストラリアが領土権を主張し、その国内法でサンクチュアリとしている海域でクジラを殺すのか?

Q7.すべてのクジラを人道的に殺すのは可能か?

Q8.南極海で捕殺されたザトウクジラの鯨肉を日本に持ちこむのはワシントン条約(CITES)違反では?

Q9.なぜ日本は、主要な貿易相手国や、捕鯨以外では友好関係にある国々からの政治的圧力に素直に応じようとしないのか?

Q10.なぜ日本は南極海鯨類捕獲調査でのザトウクジラ捕獲を延期したか?



南極海における日本の捕獲調査


Q1.日本は調査捕鯨が「擬似商業捕鯨」であるという批判にどのように応えるのか?

このような批判は反捕鯨が常に用いる一連の言説のひとつである。 実際、日本の調査の目的は科学であり、商業捕鯨が再開したおり、その捕鯨を持続可能なものにするための科学なのである。 1987年から2006年まで日本の科学者はIWCの科学小委員会に182編の科学論文を提出し、査読制度のある学術誌に91編の論文を発表している。 IWC科学小委員会による最新のJARPAレビューは2006年12月に開催された。 このレビューでは追加的データ解析を求める一連の勧告が出され、「(JARPA)調査のデータセットは、海洋生態系における鯨類の役割のいくつかの側面を解明することを可能にし、その関連で科学小委員会の作業や南極の海洋生物資源の保存に関する条約(CCAMLR)など他の関連する機関の作業に重要な貢献をなす可能性を有する」と結論づけている。 加えて、これより以前(1997年)のレビューでも、科学小委員会は日本の調査が「南半球産ミンククジラの管理を改善する可能性がある」と結論づけている。

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Q2.日本は条約の「抜け道」を悪用して捕獲調査を実施しているという非難にどう答えるのか?

捕獲調査はICRW第8条に基いてIWC加盟国すべてに認められている基本的権利である。 これは「抜け道」などではない。 IWCの決定は科学的根拠に基づかねばならないとするICRWの核心的構成部分であり、ICRW第8条に基づいた調査は完全に合法的である。 さらには、第8条2項は、調査の副産物(鯨肉)は加工し、政府の指示に従って販売しなければならないと規定されている。 これは調査を行うすべてのIWC加盟国を法的に拘束する義務なのである。

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Q3.JARPAII はJARPAからかなり拡大している。なぜザトウクジラやナガスクジラが加えられ、ミンククジラの捕獲頭数が増えたのか?

JARPAの結果から、南極の海洋生態系にはザトウクジラやナガスクジラの急激な増加をともなう重要な変化が起きていることが明らかになった。 これに伴い、これら鯨類資源の持続的利用に資する適切な管理制度を構築するために継続的なモニタリングと調査が必要となった。 このための科学的根拠となる生態系モデルを構築するためには豊富に存在するすべての鯨種からのデータが必要であるため、ザトウクジラやナガスクジラが調査対象に加えられた。 ミンククジラの年間サンプル数が増えたのは生態系の変化をより迅速に察知するためである。

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Q4.米国や英国、豪州その他の国々は、鯨を研究するために鯨を殺す必要はないと言っている。なぜ日本は非致死的な調査手法を使わないのか?

日本の鯨類調査の目的は、鯨類資源を持続的に利用するための管理体制を確立するのに必要な科学的データを収集することにある。 その目的のためには、非致死的方法ではどうしても入手できず、致死的手法で収集しなければならないデータがある。 致死的調査によって、資源量モデル作成に不可欠な卵巣や耳垢栓といった内臓・内部器官を採集できるし、生態系モデル構築のために必須の胃内容物も知ることができる。 米国や英国、豪州その他の反捕鯨国は商業捕鯨を再開しようという考えを現在もっていないので、鯨類資源を持続的に利用するための管理体制を確立するのに必要な科学的データを必要としていない。 鯨を殺さない鯨類調査が可能だと反捕鯨国が主張するのはそのためである。

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Q5.なぜ日本は、世界の世論に逆らい、商業捕鯨モラトリアムに反してまで調査捕鯨を続けているのか?

実際のところ、反捕鯨は「世界の世論」ではない。 それどころか、もっぱら欧米先進国の現象で、それが資金集めに奔走する反捕鯨NGOと欧米メディアによって誇張されているだけである。 IWCメンバーのほぼ半分は鯨類資源の持続的利用を支持している。 そもそも、商業捕鯨モラトリアム(これは元来、さらに科学的データを収集し分析するために時間的猶予を与える一時的な措置だった)との関連では、条約第8条が「この条約の規定にかかわらず」という文言で始められていて、そのため商業捕鯨モラトリアムは調査捕鯨には適用されないという点に注目しなければならない。 この条文は以下のような文言で終わっている。「この条の規定による鯨の捕獲、殺害及び処理は、この条約の適用から除外する。」

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Q6.日本はなぜIWCの南極海サンクチュアリやオ−ストラリアが領土権を主張し、その国内法でサンクチュアリとしている海域でクジラを殺すのか?

IWCの南極海サンクチュアリは商業捕鯨のみが対象で、ICRW第8条に基づいて行われる捕獲調査は対象外である。 第8条は「この条約の規定に関わらず・・・」という文言で始まっているが、これは、商業捕鯨モラトリアムや南極海サンクチュアリが捕獲調査に適用されないことを意味する。 また、IWCの南極海サンクチュアリは資源保全のために必要であるという科学小委員会の勧告なしに採択されたものである。
さらに、2004年の科学小委員会で招聘された外部科学者は資源保全措置としてのIWCのサンクチュアリを厳しく非難している。 彼らの結論とは、IWCサンクチュアリはあやふやな目的やゴールに基づいて、その正確な設計や運用を欠き、生態学的に正当化できるものではなく、資源保全としては実におおざっぱなやり方で、予防原則というよりも禁止的であるというものであった。
オーストラリアが独自に決定したサンクチュアリについては、米国含む多くの国とともに日本もオーストラリアの南極に対する領土権の主張を認めていない。 オーストラリアも締約国である南極条約は、すべての領土権に関する主張を凍結している。 よって、国際的な観点からみれば、オーストラリアの領土権の主張と南極海をサンクチュアリにするという主張は同国の国内法に基づいたものであり、国際法では何の根拠もなく、無効である。

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Q7.すべてのクジラを人道的に殺すのは可能か?

実際、捕獲されたクジラのほとんどは爆発銛によって、即座に捕殺されている。 そうでない場合は二次的捕殺方法(二番銛や大口径ライフル銃)によって捕殺時間が可能な限り短縮されるようにしている。 この2つの方法はもっとも効率よく人道的な捕殺を行うことができるように導入されたものである。 IWCは爆発銛がクジラの捕殺にもっとも有効な手段であるとし、捕鯨の人道性がこれにより格別に進歩を遂げたとしている。 鯨の捕殺は即死か致死時間2分以下であり、これは他の野生生物の捕殺時間と比較してもずっと優れている。

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Q8.南極海で捕殺されたザトウクジラの鯨肉を日本に持ちこむのはワシントン条約(CITES)違反では?

違反ではない。 ザトウクジラはCITES付属書Iに記載されており、南極海から日本への持ち込みはCITESが規定する「取引」にあたるが、取引規制が適応されるのはCITES掲載種が主として商業目的で取引される場合のみである。 そうした場合に当たるかどうかの判断は日本だけに委ねられている。 日本はこの捕獲の主な目的が科学的理由であり、商業的なものでないことを明言している。

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Q9.なぜ日本は、主要な貿易相手国や、捕鯨以外では友好関係にある国々からの政治的圧力に素直に応じようとしないのか?

日本の捕鯨政策を変更するよう要求する多くの国が、様々な政治的抗議・申し入れをしてきている。 捕鯨問題に関する見解の相違が日本とそうした国々との間の良好な関係に影響したことはなく、また影響を及ぼすべきではない。 しかし、見解の相違が事実だからと言って、日本がその立場を改めなければならないということにはならない。 鯨類を国際法と科学に厳格に従いつつ持続可能なやり方で利用している限り、捕鯨で立場を異にする国が自分たちの倫理的・道徳的価値観を日本人に押しつける権利などない。 政治的強制ではなく、互いの差異を認め合うことこそがこの困難な問題を解決に導く。
日本には、鯨を食料資源として持続的に利用してきた長い歴史がある。 世界の食糧供給と貿易の先行きがますます危ぶまれていることを考えるならば、動物性たんぱく質の獲得手段のひとつとして豊富な鯨類資源を持続可能なやり方で利用することは、日本人だけでなく、食料資源に乏しい他の国々の将来にとっても死活的な重要性をもっている。

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Q10.なぜ日本は南極海鯨類捕獲調査でのザトウクジラ捕獲を延期したか?

日本は国際捕鯨委員会の正常化過程において前進があると考えられる限り、かつ、反捕鯨国からの過剰な感情的反応を避けることは重要であることを考慮し、国際捕鯨委員会議長の要請に応じ、ザトウクジラの捕獲調査を延期することに同意した。 2008年3月にIWCは国際捕鯨委員会の将来を議論するために特別会議を開くことになっており、日本は、現在の副議長としてこの特別会議の成功を念願しつつ、IWC議長のこのような要請に同意することにした。

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