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2012年IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について
−IWC/POWER調査航海−


平成24年9月10日
財団法人 日本鯨類研究所


1 経緯

IWC(国際捕鯨委員会)/日本共同北太平洋鯨類目視調査は、IWC/SOWER(International Whaling Commission-Southern Ocean Whale and Ecosystem Research:南大洋鯨類生態系調査、1996/97年度〜2009/2010年度) プログラムの終了を受け、そのノウハウ等を活用して、2010年度よりIWCと日本との共同で実施されているプログラムです。

IWC-SOWERは、その前身であるIDCR(International Decade of Cetacean Research:国際鯨類調査10ヶ年計画、1978/79年度〜1995/96年度)と合わせ32年間にわたって実施され、南極海のクロミンククジラをはじめとする鯨類資源の資源量とそのトレンドを明らかにするなど、IWCで最も成功した国際共同調査プログラムとして知られています。 日本は、長年にわたってこの調査プログラムに対し調査船舶とその乗組員を提供し、その継続的実施に貢献してきました。

IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査では、IWC科学委員会の主要研究課題に則した調査計画が2010年より実施されており、昨年までの調査では、過去数十年にわたって広域的調査が実施されてこなかった北緯40度以北のアラスカ湾海域において、多数のナガスクジラやイワシクジラが発見され、貴重なデータが収集されてきました。 今回は、その第3回目の調査航海となります。

商業捕鯨時代以降調査が行われていないアラスカ湾沖合海域において鯨類の発見がどの程度あるのか、また、IWCの下での鯨類目視調査に昨年に引き続き従事する日本の鯨類調査船「第三勇新丸」が期待どおりの成果を挙げることができるのか、内外の鯨類研究者からその調査結果が注目されています。

なお、2011年のIWC科学委員会では、本調査の名称を、IWC/POWER(Pacific Ocean Whale and Ecosystem Research:太平洋鯨類生態系調査)とすることが決定しています。


2 調査計画と結果概要

本件目視調査は、IWCと日本国政府が共同して実施するもので、IWC科学委員会が調査計画の策定を行い、同委員会内に設置されたPOWER運営グループ(議長:東京海洋大学:加藤秀弘教授)の主導の下、水産総合研究センター国際水産資源研究所や米国NOAA/NMFSアラスカ漁業科学センター等関係機関が協力して、具体的な調査航海計画の立案を行いました。 同運営グループは、調査結果の分析についても、これを主導します。

今回の調査では、米国及びカナダ200海里水域を含めた広大なアラスカ湾沖合海域を対象に60日間の目視調査を実施しました。 このような長期間にわたって広大な海域を対象とした鯨類目視等調査を実施する能力は、現在のところ日本の鯨類調査船しか有していません。 IWC主導の下、日本の国際貢献として、今後も北太平洋における鯨類目視データの空白海域で調査を行っていくことが、商業捕鯨で大きく減少した鯨類資源の回復動向を知る上で大変重要となります。 調査航海は、水産庁からの委託を受け、(財)日本鯨類研究所が実施しました。 本年の調査計画とその結果概要は以下のとおりですが、調査結果の詳細については明年のIWC科学委員会年次会議にて発表されます。


2.1 主要調査目的:

(1) イワシクジラ(及びナガスクジラ等その他の鯨種)の資源量推定

(2) イワシクジラ、ナガスクジラ、ザトウクジラ及びマッコウクジラ(及びその他の鯨種)の系群構造に関する情報の収集(特にバイオプシー・サンプル(皮膚組織標本)の採取及び個体識別写真)

(3) 北太平洋セミクジラ、シロナガスクジラ等希少鯨種の個体識別写真撮影及びバイオプシー・サンプルの採取


2.2. 航海期間:

2012年7月13日(塩釜出港)−9月10日(塩釜入港)(全60日間)


2.3. 調査海域

北緯40度以北、米国アラスカ州以南、西経150度以東、-西経135度以西(公海及び米国・カナダ200海里水域を含む。)

図1.2012年の調査海域。
調査海域図
2.4. 国際調査員 :

松岡耕二(調査団長、日本・(財)日本鯨類研究所)
熊谷佐枝子(日本・IWC選任国際調査員)
Sally Mizroch(米国・NOAA/NMFSアラスカ漁業科学センター)
Yong-Rock An(韓国・CRI/NFRDI韓国水産振興院鯨類研究所)


2.5. 調査船 :

第三勇新丸((742トン)、(株)共同船舶所属、廣瀬喜代治船長以下(16名))


2.6. 総探索距離 :

2,677海里(約4,957km)


2.7. 主要な発見鯨種 :

シロナガスクジラ4群4頭、ナガスクジラ149群210頭、イワシクジラ87群164頭、ミンククジラ2群2頭、セミクジラ1群1頭、ザトウクジラ21群33頭、マッコウクジラ50群57頭、シャチ17群99頭
これらの情報は鯨類の資源量推定に役立てられます。 また、分析した資源量推定値はIWCの科学委員会に報告されます。


2.8. サンプル採取結果等 :

(1)個体識別写真撮影(個体数)
シロナガスクジラ4頭、ナガスクジラ60頭、イワシクジラ51頭、セミクジラ1頭、ザトウクジラ26頭、マッコウクジラ1頭、シャチ47頭
これらの写真は、各鯨種の回遊生態や生活史の解明に役立てられます。

(2)バイオプシー・サンプル採取(個体数)
シロナガスクジラ2頭、ナガスクジラ12頭、イワシクジラ37頭、シャチ1頭
これらのサンプルは、各鯨種の系群構造の解明に役立てられます。

(3)海洋漂流物記録
合計228件(漁業用浮子等108件、材木等24件、その他)


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(左から) 写真1.アラスカ沿岸付近のザトウクジラ(尾羽上げ)  写真2.希少種であるセミクジラ  写真3.船首付近を遊泳するイワシクジラ  写真4.ナガスクジラの親子


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