ホーム メール 印刷用
写真
写真
translate

2014年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について
−IWC-POWER調査航海−


平成26年9月1日
日本鯨類研究所


1 経緯

本調査はIWC(国際捕鯨委員会)と我が国が共同で実施しているもので、IWCでは通称POWER(Pacific Ocean Whale and Ecosystem Research )と呼ばれています。

この調査は世界的に成功例として高い評価を得ており、2009年度まで南極海で行われていたIWCの調査IWC/SOWER(International Whaling Commission-Southern Ocean Whale and Ecosystem Research:南大洋鯨類生態系調査、1996/97年度〜2009/2010年度)での経験と実績を踏まえ、そのノウハウ等を活用して、2010年度よりIWCと我が国が共同で実施している調査です。

IWC/POWERは、2010 年より、IWC科学委員会の主要課題に則した調査を実施しており、昨年までの調査では、過去数十年にわたって広域的調査が実施されてこなかった北緯40度以北のアラスカ湾海域において、多数のナガスクジラやイワシクジラを発見し、客観的な資源評価に貢献する貴重なデータを収集しました。 今回は、第5回目の調査航海となり、昨年までの調査海域のさらに西側(北緯30度以北、同40度以南)において調査を実施しました。 商業捕鯨時代以降調査が行われていない北東太平洋沖合海域において鯨類の発見がどの程度あるのかについて、内外の鯨類研究者から注目を集めています。 また本年度は、長年の懸案であった米国EEZ内でのバイオプシー標本採取が可能となるなど、国際調査としての実績を踏まえ、関係国の協力体制がより強化されています。


2 調査計画と結果概要

本件目視調査は、IWCと日本国政府が共同で実施するもので、IWC科学委員会が調査計画の策定を行い、同委員会内に設置されたPOWER運営グループ(議長:東京海洋大学:加藤秀弘教授)の主導の下、水産総合研究センター国際水産資源研究所や米国NOAA/NMFSアラスカ漁業科学センター等関係機関が協力して、具体的な調査航海計画の立案を行いました。 同運営グループは、調査結果の分析についても、これを主導します。

今回の調査では、北東太平洋の公海において60日間にわたり目視調査を実施しました。 このような長期間にわたり広大な海域を目視調査できる能力は、現在のところ日本の鯨類調査船しか有していません。 IWC主導による我が国の国際的な貢献として、今後も北太平洋における鯨類目視データの空白海域で調査を行っていくことが、商業捕鯨で大きく減少した鯨類資源の回復動向を知る上で大変重要となります。 調査航海は、水産庁からの委託を受け、(一財)日本鯨類研究所が実施しました。 本年の調査の結果、以下のとおり、調査海域内で多数のニタリクジラを発見し、同資源の頑健さを確認するとともに、発見個体の大部分からDNA標本を採取することに成功しました。 調査結果の詳細は明年のIWC科学委員会年次会議にて発表されます。


2.1 主要調査目的:

(1) ニタリクジラ、イワシクジラ、ナガスクジラ、その他の資源量推定

(2) ニタリクジラ、イワシクジラ、ナガスクジラ、ザトウクジラ及びマッコウクジラ(及びその他の鯨種)の系群構造に関する情報の収集(特にバイオプシー・サンプル(皮膚組織標本)の採取及び個体識別写真)

(3) 北太平洋セミクジラ、シロナガスクジラ等希少鯨種の個体識別写真撮影及びバイオプシー・サンプルの採取


2.2. 航海期間:

2014年7月2日(塩釜出港)−8月30日(塩釜入港)(全60日間)


2.3. 調査海域

北緯30度以北、同40度以南、東経170度以東、西経160度以西(公海および米国EEZを含む)

図1.2014年の調査海域。
調査海域図
2.4. 国際調査員 :

松岡耕二(日本・調査団長・(一財)日本鯨類研究所)
Sally Mizroch(米国・NOAA/NMFSアラスカ漁業科学センター)
Jessica Taylor (英国・IWC選任国際調査員)
吉村勇(日本・IWC選任国際調査員)


2.5. 調査船 :

第三勇新丸((742トン)、(株)共同船舶所属、山内善行船長以下(17名))


2.6. 総探索距離 :

3,762海里(約6,967km)


2.7. 主要な発見鯨種 :

シロナガスクジラ1群1頭、イワシクジラ1群1頭、ニタリクジラ118群140頭、マッコウクジラ78群155頭、シャチ1群3頭、ハナゴンドウ8群140頭、スジイルカ5群420頭、マダライルカ6群436頭、マイルカ42群1,747頭


2.8. サンプル採取結果等 :

(1)個体識別写真撮影(個体数)
シロナガスクジラ1頭、ニタリクジラ69頭、シャチ3頭

(2)バイオプシー・サンプル採取(個体数)
シロナガスクジラ1頭、ニタリクジラ78頭、シャチ1頭


写真:2014年度調査の様子


photo  photo  photo

(左から) 写真1.浮上直前のニタリクジラの親子  写真2.船に接近してくるニタリクジラ  写真3.浮上したマッコウクジラの親子


photo  photo  photo

(左から) 写真4.バイオプシー実験風景(海中を遊泳するニタリクジラ)  写真6.シャチの群れ  写真7.北東太平洋最東端にて(第三勇新丸船橋後方デッキにて)


2014年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について−IWC-POWER調査航海− PDF形式

Valid XHTML 1.0 Transitional