ホーム メール 印刷用
写真
写真
translate

2025年 IWC/日本共同 北太平洋鯨類目視調査の終了について
−IWC/POWER 調査航海:調査船の入港−


2025年10月6日
指定鯨類科学調査法人
一般財団法人 日本鯨類研究所


1. 経緯

本調査は IWC(国際捕鯨委員会)と我が国が共同で実施しているもので、IWC では通称 IWC-POWER (International Whaling Commission-Pacific Ocean Whale and Ecosystem Research)と呼ばれています。この調査は 2009 年度まで南極海で行われていた世界的な成功例として高い評価を得ている IWC の調査計画 IWC/SOWER (International Whaling Commission/Southern Ocean Whale and Ecosystem Research:南大洋鯨類生態系調査、1996/97年度〜2009/2010 年度) での経験と実績を踏まえ、そのノウハウ等を活用して、IWC 科学委員会(IWC/SC)の主要研究課題に則って、2010 年度より実施されています。

昨年までの15年間の調査では、過去数十年にわたって広域的な鯨類目視調査が実施されていなかった北緯40度以北のアラスカ湾海域において多数のナガスクジラやイワシクジラが発見されたほか、北緯40度以南の海域では多数のニタリクジラやマッコウクジラが発見され、これら鯨種の客観的な資源評価に貢献する貴重なデータが収集されてきました。また、希少種であるシロナガスクジラやセミクジラの分布情報も収集されてきました。

今回は、その第16回目の調査航海として、米国政府の多大な協力の下に、昨年に引き続き北極海(チュクチ海南部:米国EEZ内)において調査を行ったほか、ベーリング海の中央海域(北緯69度線以南、アリューシャン列島以北、東経167度以東、西経170度線以西の海域)を対象に、米国と日本からそれぞれ2名、合計4名の国際調査員により、7月22日から10月9日にかけて調査を実施しました。


2. 調査計画と結果概要

この目視調査は、IWC と日本の共同調査として IWC科学委員会がその計画の策定を行い、同委員会内に設置された POWER 運営グループ(コンビーナー:松岡耕二(一財)日本鯨類研究所)が計画の立案と調査の実施を主導しました。調査は当研究所が水産庁から委託を受け、国立大学法人東京海洋大学、米国 NOAA/AFSC(海洋大気庁/アラスカ水産科学センター)などの関係研究機関と協力しながら実施されました。

調査海域ではコククジラやナガスクジラなどが多数発見されました。発見したクジラに対しては、個体識別写真の撮影やDNA分析用のバイオプシー・サンプル(表皮標本)採取を行いました。特にコククジラは本年の調査では優先度が高く、32個体からの採取に成功しました。 調査結果の詳細は IWC/SC 年次会議などの国際会議などで発表されます(結果は速報による暫定値)。


2.1 主要調査目的:

(1) ザトウクジラ及びコククジラの資源評価に関する情報の収集

(2) 希少種であるセミクジラの分布、系群構造に関する情報の収集

(3) 資源情報が不足しているその他の鯨類資源について資源量と系群構造に関する情報の収集

(4) 中長期計画を策定するために必要な海洋データ(海水温、漂流物等)を含む基礎情報の収集


2.2. 航海期間

2025年7月22日−10月9日(80日間)


2.3. 調査海域:

チュクチ海およびベーリング海の一部海域(図1)。

アラスカのダッチハーバー港に寄港し米国調査員の乗下船や調査資材の積下ろしを行いました。


2.4. 国際調査員:

IWC科学委員会が指名した下記の調査員によって調査が行われました。

村瀬弘人; 調査団長、日本・東京海洋大学(IWC/POWER運営グループ)

Jessica Crance; 米国・NOAA/AFSC(海洋大気庁/アラスカ漁業科学センター)

Bernardo Alps ; 米国・IWC選任国際調査員

吉村 勇; 日本・IWC選任国際調査員


2.5. 調査船 :

第二勇新丸(747トン、(株)共同船舶所属、大越親正船長以下16名)


2.6. 総探索距離 :

1,161海里 (2,150 km)


2.7. 主要な発見鯨種:

セミクジラ 1群1頭、コククジラ 55群75頭、ナガスクジラ 91群126頭、イワシクジラ 16群69頭、ミンククジラ 8群8頭、ザトウクジラ 50群68頭、マッコウクジラ 10群18頭、シャチ 9群45頭


2.8. 実験結果

(1)個体識別写真撮影(撮影個体数)

セミクジラ 1頭、コククジラ 62頭、ナガスクジラ 43頭、イワシクジラ 1頭、ザトウクジラ 24頭、シャチ 10頭

(2)バイオプシー採取(個体数)

セミクジラ 1頭、コククジラ 32頭、ナガスクジラ 12頭、イワシクジラ 5頭、ザトウクジラ 12頭

(3)鳴音録音

149地点で614時間の音響モニタリングを実施しセミクジラ、コククジラ、ナガスクジラ、ザトウクジラ、マッコウクジラ、シャチなどの鳴音録音を行いました。

(4)海洋漂流物(発見数)

調査海域において14件の海洋漂流物を記録しました。


調査海域図

図1. 2025年の調査海域(緑色)とその調査コース(青色)


写真:2025年度調査の様子


photo photo
イ)海氷面で口を開き摂餌をするザトウクジラ ロ)呼吸のため浮上するナガスクジラ
photo photo
ハ)噴気を上げるコククジラ ニ)コククジラを対象にした表皮標本の採取
photo photo
ホ)探鯨する乗組員 へ)国際調査員と乗組員の集合写真

2025年IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について−IWC-POWER調査航海:調査船の帰港− PDF形式

Valid XHTML 1.0 Transitional