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2021年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について
−IWC-POWER調査航海−


令和3年9月30日
指定鯨類科学調査法人
(一財)日本鯨類研究所


1 経緯

本調査はIWC(International Whaling Commission:国際捕鯨委員会)と日本が共同で実施しているもので、IWCでは通称IWC-POWER (IWC-Pacific Ocean Whale and Ecosystem Research)と呼ばれています。 この調査は2009年度まで南極海で実施され、世界的に高い評価を得たIWCと日本との共同調査のIWC-SOWER (IWC-Southern Ocean Whale and Ecosystem Research:南大洋鯨類生態系調査、1996/97年度〜2009/2010年度)における経験と実績を踏まえ、そのノウハウ等を活用して、IWC科学委員会(IWC/SC)の主要研究課題に則って、2010年度より実施されています。

本調査は、過去数十年にわたって広域的な鯨類目視調査が行われていなかった北東太平洋およびベーリング海を含む、北太平洋を対象として行われています。 昨年までの11年間の調査では、北緯40度以北海域において多数のナガスクジラやイワシクジラが発見されたほか、北緯40度以南の海域では多数のニタリクジラやマッコウクジラが発見され、資源評価に貢献する貴重なデータが収集されました。 また、希少種であるシロナガスクジラやセミクジラの情報も収集されています。

今回は、その第12回目の調査航海として、北東太平洋の北緯40度以北、西経135度から155度間の内の公海において、8月2日から9月30日かけて調査を実施しました。 日本から遠方の海域での調査であるため、無寄港による調査となりました。また、露国の調査員も参加する予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で不参加となり、米国と日本の調査員によって調査を実施することになりました。


2 調査計画と結果概要

本調査は、IWCと日本の共同調査であり、IWC/SC内に設置されたPOWER運営グループ(コンビーナー:松岡耕二・日本鯨類研究所資源管理部門長)が計画の策定を行うとともに、IWC/SCによる計画案の承認を経て、調査の実施を主導しました。 調査は、当研究所が水産庁から委託を受け、国立研究開発法人水産研究・教育機構水産資源研究所、国立大学法人東京海洋大学、米国のNOAA/NMFS(大気海洋庁漁業局)などの関係機関と協力しながら実施しました。

本年の調査計画とその結果概要は以下のとおりです。 調査海域ではナガスクジラ、イワシクジラ、ニタリクジラ、マッコウクジラが多数発見され、これらの資源の頑健さがあらためて示唆されました。 希少種であるシロナガスクジラの発見もありました。 発見したクジラを対象に、個体識別写真の撮影やDNA分析用のバイオプシー・サンプル(表皮標本)採取を行いました。 本年度は日本の自発的な試みとして、潜水行動記録標識の装着を新たに行いました。 なお、今回は、希少種であるセミクジラの発見はありませんでした。 調査結果の詳細は、来年のIWC/SCなどで発表されます。


2.1 主要調査目的

(1) イワシクジラ、ザトウクジラ及びコククジラの詳細資源評価に関する情報収集

(2) 希少種である西太平洋のセミクジラ及びシロナガスクジラに関する情報収集

(3) 資源情報が不足しているその他の鯨類資源について資源量と系群構造に関する情報収集

(4) 本調査の中長期計画を策定するために必要な情報収集


2.2. 航海期間

令和3年8月2日−9月30日(60日間:無寄港)


2.3. 調査海域

北緯40度以北、西経155度以東、西経135度以西の外国の排他的経済水域を除いた海域(図1)。


2021調査海域図

図1. 2021年の調査海域(青色)。


2.4. 国際調査員

村瀬弘人 日本・調査団長・国立大学法人 東京海洋大学 准教授

James W. Gilpatrick, Jr. 米国・NOAA SWFSC(NOAA Southwest Fisheries Science Center:南西漁業科学センター)

吉村 勇 日本・IWC選任国際調査員


2.5. 調査船 :

第二勇新丸(747トン、(株)共同船舶所属、江口浩司船長以下16名)


2.6. 総探索距離 :

1,562.5海里(約2,893km)


2.7. 主要な発見鯨種 :

シロナガスクジラ6群7頭、ナガスクジラ77群113頭、イワシクジラ23群37頭、ニタリクジラ20群22頭、マッコウクジラ14群14頭、シャチ1群4頭


2.8. サンプル採取結果等:

(1)個体識別写真撮影(個体数)
シロナガスクジラ7頭、ナガスクジラ31頭、イワシクジラ15頭、ニタリクジラ13頭、シャチ3頭(全69個体)

(2)バイオプシー・サンプル採集(個体数)
シロナガスクジラ3頭、ナガスクジラ9頭、イワシクジラ4頭、ニタリクジラ2頭、シャチ1頭(合計19個体)

(3)潜水行動記録標識(個体数)
ナガスクジラ2頭、イワシクジラ3頭(合計5個体)


写真:2021年度調査の様子

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海面で呼吸をするシロナガスクジラ 尾びれを上げ潜水するシロナガスクジラ
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海面に浮上してきたナガスクジラ ナガスクジラのバイオプシー・サンプルの採取及び潜水行動記録標識の装着

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