国際捕鯨委員会科学委員会(IWC/SC)は、1978/79年から1995/96年までの南半球夏季にわたり、国際鯨類調査10ヵ年計画(国際鯨類調査10ヵ年計画:IDCR:International Decade of Cetacean Research)の一環として、クロミンククジラの資源評価を目的とした一連の南極海域における目視調査航海を実施しました。1995/96年からは、このプログラムは「南大洋鯨類態系調査(SOWER:IWC/ Southern Ocean Whale and Ecosystem Research)」と改称され、2009/10年まで継続されました。SOWERプログラム開始時には、中緯度海域におけるシロナガスクジラの調査要素が追加されました。
IDCR-SOWER調査は、国際捕鯨委員会がヒゲクジラ類(ニタリクジラを除く)の管理のために定めた海域(参照)で実施されました。発足当初は日本と旧ソ連が提供した2〜4隻の調査船が、各南半球夏季シーズンに異なる海域を調査しました。
調査の大半は、特にクロミンククジラを対象に、ヒゲクジラ類の資源量推定を算出する目的で、予め設定されたトラックラインに沿った目視データ収集に重点が置かれていました。1978/79-1983/84、1985/86-1990/91および1991/92-2003/04の間に3回の周回南極調査が実施され、それらの調査で得られたデータは、クロミンククジラおよびその他のヒゲクジラ類の資源量推定に使用されました。その他の調査は、ライン・トランセクト法に関連する実験の実施に重点が置かれていました。
低緯度海域におけるシロナガスクジラの調査航海が3回実施されました。これらは(a) 1995/96年シーズンにオーストラリア南岸沖で、(b) 1996/97年シーズンにマダガスカル南方で、および(c) 1997/98年シーズンにチリ沖の南東太平洋です。
IDCR-SOWERの主な調査活動は、ライン・トランセクト法を用いた組織的目視調査による各種鯨類の資源量推定でした。IDCR-SOWER開始当初、クロミンククジラを対象にディスカバリー型標識装着実験を実施し、標識再捕法に基づく資源量推定を目指しました。その後、同種の分布・移動・系群構造に関する研究においても標識再捕法が用いられました。IDCR-SOWERの進展に伴い、目視調査と並行して、各種鯨類の分布・移動・系群構造研究のための写真個体識別法や生体組織サンプリングなどの実験も実施されました。
IDCR-SOWERは、IWC科学委員会が運営委員会を通じて組織した真に国際的な調査プログラムでした。各調査の設計と実施はIWC科学委員会の責任であり、同委員会は各調査航海に適した(日本や旧ソ連など一部加盟国政府が提供する科学者を除き)国際科学者を特定し招待する役割を担いました。通常、各調査船には3〜4名の科学者が乗船しました(図1)。
図1.1997/98年度IWC SOWER調査航海(IWC管理海区第U区II)に参加した科学者たち(調査船「第二昭南丸」乗船)
IDCR-SOWERは、前述の3回の南極周回を含む30年以上にわたり実施されました。これらの調査には、16の加盟国から合計86名の科学者がこれらに参加しました。
・「国際捕鯨委員会/科学小委員会の変遷と日本との関係(VI)IDCR/SOWER南半球産ミンククジラ資源評価航海(その2)」 大隅清治著. 鯨研通信471号. 2016/9.
・「国際捕鯨委員会/科学小委員会の変遷と日本との関係(VI)IDCR/SOWER南半球産ミンククジラ資源評価航海(その1)」 大隅清治著. 鯨研通信469号. 2016/3.
・「2008/09 南大洋鯨類生態系調査(IWC/SOWER)航海を終えて」 熊谷佐枝子著. 鯨研通信442号. 2009/6.
・「南大洋鯨類生態調査(IWC/SC)の現状と将来−クロミンククジラアセスメント航海の27年−」 松岡耕二著. 鯨研通信426号. 2005/6.
・「クロミンククジラを見つけるのは難しいことですか?−条件によって変化する発見難易度について−」 村瀬弘人著. 鯨研通信422号. 2004/6.
・「南半球ミンク鯨アセスメント航海の10年」 笠松不二男著. 鯨研通信374号. 1988/11.