本研究室では、汚染物質の蓄積パターンと、鯨類の健康に対する汚染物質の影響を解明するための分析に取り組んでいます。クジラの組織と物理環境サンプルの両方において、微量元素や有機塩素化合物(OC)など、様々な種類の汚染物質がモニタリングされています。微量元素には、毒性のある水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、ニッケル(Ni)(非必須元素)や必須元素である銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)が含まれます。有毒元素は動物や人間に悪影響を及ぼし、必須元素よりも残留性が高いのに対し、必須元素は動物や人間の生存と健康にとって不可欠です。
また、鯨類生物研究室と共同で、鯨類の年齢査定のための代替化学技術の開発に関する研究を行っています。具体的には、アスパラギン酸ラセミ化(AAR)に基づくクロミンククジラの年齢査定技術を開発しています。AAR研究で使用されたのと同じ個体のサンプルについて、鯨類生物研究室が耳垢栓を用いて査定した年齢が較正に使用されます。
さらに、鯨類生物研究室と連携し、いくつかの生物学的パラメータを推定するための非致死的手法の研究にも取り組んでいます。例えば、雌クロミンククジラの性状態を示す指標として、バイオプシー標本中のプロゲステロン濃度の研究が行われています。プロゲステロン研究に用いられたのと同じ個体の卵巣から得られた性状態情報は、較正に用いられます。
・水晶体に含まれるアスパラギン酸のラセミ化を用いたクロミンククジラ年齢査定法の開発. 安永玄太.鯨研通信第496号. 2022/12.